視覚効果とアニメーション:Destiny 2の場合

2022年10月月25日 - Sam

テレビゲームの世界ほど、家みたいにくつろげる場所はありません。私たちの多くにとってはDestiny 2が家ですね。ガーディアンになって、世界を救うために仲間たちと一緒に戦い、すごい報酬を手に入れて、健闘を称え合うのはとても特別ことです。最後の「称え合う」部分は、他の多くのゲームにはないDestiny 2の特徴です。というのも、皆さんは即興のタワーダンスパーティーをご存じですか?  

今回はVFX(視覚効果)アーティストとアニメーターに話を聞きます。弊社チームに所属する2人は、大勢の仲間と一緒にDestiny 2の楽しい感情表現やフィニッシャーを作っています。  

Ben:こんにちは、Ben Platnickです。代名詞は「彼」でお願いします。BungieのVFXアーティストを務めています。主にプレイヤーの報酬、つまり手に入れられるものすべて、船、スパロー、トランスマット、感情表現、フィニッシャー、アーマー、武器など、何でも作っています。スパークルが必要なもので、シルバーやブライトダストで手に入るアイテムであれば、私がスパークルをつけています。 

Jonathan:こんにちは、Jonathan Lesterです。代名詞は「彼」です私はアニメーションアウトソーシングのスペシャリストで、要するにすべての感情表現を担当するアニメーターです。 

面白い話に入る前に、まずは1つ質問:感情表現はどうやってできるのか? 

できたてほやほやの感情表現!  

報酬となるアセットをコンセプト化するプロセスは、複数チームの共同作業です。何かをゲームに追加することが決まる瞬間から、完成するまで約9か月かかります。  

それを考えると、アニメーションはとても面倒で時間のかかる技術ですね。従来は、キャラクターを動かしたいときにはポーズを1つ1つ作成し、それらをつなげて動きを生み出していました。「フレーム・バイ・フレーム」、「手描き」、「ハンドキー」などと呼ばれています。どれも同じ意味で、アニメーションはハイペースの作業ではないということです。 

アニメーション部門を適切なペースで動かす(笑)ために、モーションキャプチャを主なツールとして使います。これでアニメーションのベースラインをデータ化してから作業を始ます。モーションキャプチャのパフォーマーが必要なアクションを行い、アニメーターがそのデータを処理、構築、修正して、最終的に感情表現を作り上げるのです。Jonathanの感情表現作りを非常にざっくりお話ししましたが、考え方は十分理解できるはずです。   



Ben:まさしくチームの努力の賜物ですよ。Jonathanを始めとしたアートディレクションと、商業部門の素晴らしい仲間たちと一緒にアイディアを出し合い、その感情表現を合理的に作成できるか、(時間的、技術的、法的)制約はないかを確認し、Jonathanと販売チームがアニメーション関係で必要な仕事をすべてこなせるようにリストをまとめます。その後、スパークルをつけるのが私の役目です。 

Jonathan:チームでは、まずシーズン用の感情表現案を20~30個リストアップします。そして、どれがうまくいくか、いかないかを、1~2週間かけて繰り返し検討します。 

リストが承認されると、感情表現に使用するビジュアルの参考資料を探してキャプチャします。ほうきとゴミ箱のふたを剣と盾に見立てたり、ソファの上で暴れる人をマルチプレイの感情表現にしたり、そんな単純なものです。そこから、モーションキャプチャか手描きのアニメーションを起こします。どちらにするかはタイムフレーム次第です。  

完成したら私がデータを調整して、ポーズが正しいか、タイミングや間隔が適切か、すべてうまくいっているかを確認します。いい感じに仕上がったら、それをBenに渡して魔法をかけてもらいます。  

オーブとケーキの話 

自分のアートに没頭し作品に誇りを持てることが、結果につながっているのですね。では、ゲーム内の感情表現をデザイン・作成したり、ミームを適合させたりするときにどんな作業を行っているのか、最初のコンセプトがプレイヤーに届くまでどれくらいかかるのか教えてください。  

Ben:そうですね、9か月後に確実にお届けできるコンテンツを見極めて、プレイヤーが認め、笑い、コレクションに加えたいと思えるものを作るのは大変です。 

「球形の熟考」の感情表現は良い例で、永遠に廃れないミームになるでしょう。 



元ネタが良かったんです。構築できるとても単純な小道具がたくさんあったので。VFXでは既定のメモリと技術的制限を意識しなければならないため、凝ったシーケンスや小道具は作れないという問題がしばしば発生します。その点で「球形の熟考」は、椅子、台、オーブ、あとは魔法のスパークルを加えるだけだったので、時間内に完成させられた良い例というわけです。 

Jonathan:もうひとつ知ってほしいのは、毎回必ずしもオリジナルのアイディアを出す必要はないということです。『ルーニー・テューンズ』を例に出すと、アニメーターは100回使われた同じアイディアを、違う切り口で表現しています。だから「球形の熟考」のミームも、アクターが身を乗り出すモーションキャプチャからさまざまな解釈を加えました。占い師の水晶玉の手の動きだったり、壊れたテレビを叩くみたいにオーブをコンコン叩いてみたり。オリジナルの資料に忠実でありながらも、1つの感情表現でいろいろなことが可能なのです。難しいけれど、元ネタがはっきりわかる状態でどこまで感情表現の幅を広げられるか、理想的なバランスを見つけ出すのはとても楽しいです。 

Ben:アニメーションとVFXは、2つのグループで1つのケーキを作るようなものです。アニメーションが材料を混ぜて焼く係。そしてVFXがケーキを自由にデコレーションする係。飾り方は無数にあって、ときにはアニメーターが意図していたものとは全く違う感情表現が出来上がることもあります。でも互いに協力し、想像力が花開くのを受け入れた成果が、毎シーズンプレイヤーに届けられているのです。最初のメールから完成品ができるまで、Jonathanやアートディレクターやその他たくさんの人々と試行錯誤しながら、アニメーションを作り上げていく作業はいつでもすごく楽しいです。 

もしニワトリを置いてみたら? 

1つのアイディアが変化して全然異なるものに成長していっても、元々持っていたエネルギーはそのまま継承されているというのが、とても興味深いです。2つのグループが共同作業をして、魔法のようなカオスを生み出す面白い例といえば、「宙賊のシーズン」に登場した感情表現「甲板掃除」でしょう。どんな経緯があったのですか?  

Jonathan:これは私が手がけた作品で初めてゲームに実装されたものです!何が何だかわからないでやっていました。研修が終わったばかりで、でも上手く仕上がりましたよ!  

Ben:すごくいい感情表現だよね。 

Jonathan:いやあ、ありがとう。心配で仕方なかったんです。アーティストとしての自分が、細かい部分まで気にしすぎていたんです。プレイヤーが使いたいと思ってくれるように、自分が満足できるように、でもアーティストとしては決して満足しないようにって。「よし、なかなかいい感じだ」と頷いて、先に進むしかないのに。「甲板掃除」の感情表現は、その「なかなかいい感じ」にも到達していないと感じていました。本当に苦労したんです!でもBenと一緒に小道具や、愛着を持ってもらう方法を考えて、私の作品をBenが完成させてくれました!水のバシャバシャと、他に何を追加したんだっけ?肩の上にオンドリ?  

Ben:ニワトリだよ。オウムのモデルがないことに気づいたのですが、このためだけにオウムのモデルを作るには時期的に遅すぎました。それでいろいろな同僚に相談したら、「ねえ、だったら肩にニワトリでも置けば?」みたいなことを言われて。みんな笑っていたけど、自分は「いや、マジでニワトリを置けばいいんじゃないか?中佐がいる!」と思いました。ちなみに、「中佐」というのはゲームに登場したニワトリです。というわけで結局それが出荷され、感情表現「甲板掃除」と「家禽をなでる」に中佐が現れます。😊  

Jonathan:これこそ「マジで、すばらしいチームワークだ」と思った最高の事例です。本当にすごかった。 



とはいえ、全部が「オウムもニワトリも同じ」というわけにはいかず、新しい感情表現を構築するときには何を作ろうとしているのかを意識する必要がありますね。 

Jonathan:感情表現などをデザインする中で最大の制約の1つは、ゲームのパラメータに適合させつつ、同時に悪用されないようにしなければいけない点です。たとえば「寝そべって昼寝をしている感情表現を作ろう」と考えたとしましょう。タワー内で使えば適切な感情表現になるでしょう。しかしPvPの最中に、狙った相手がこの感情表現を使って寝そべったとしたら、予期せぬツールを使って文字通り「ボタン1つで弾を避ける」ことになるわけです。このようなことは避けたいのです。  

Ben:それに、現在プレイヤーをスタート地点から一定以上離れた場所へ移動させることはできません。さもないと、Bad Things Happen™ということになります。 

「自分もやってみたい」という人へ 

アニメーションとVFXに関して言えば、Bungieは極めて才能に溢れた人材がが舞台裏に控えています。このインタビューでは2、3人としか話していませんが、チームはかなり大所帯で、メンバーは複数の領域にまたがっています。ボスのアニメーションに特化している人もいるし、JonathanやBenのように報酬や感情表現を担当している人もいます。それでも皆、どんなことにも協力して取り組んでいます。  

ところで、Bungieで働き始めたきっかけはなんですか?お楽しみや自由はどのくらいありますか? あるいは従わなければならない「面倒な手続き」や規則はたくさんありますか?  

Ben:初めてVFXに出会ったのは『Team Fortress 2』というゲームで、コスメティックのMODを作りました。そこでVFXにハマったんです。パズルを解いたり物事を解明するのがとても好きで、VFXは基本的にそれをやりながらお金を稼ぐことができます。結局VFXの学校に通って、卒業後Bungieの求人に応募しました。Bungieから「ねえ、TF2でやっていたのと同じことをやらない? 今度は仕事として」と提案され、私は喜んで承諾しました。 

Bungieのすばらしいところは、私の創造力を決して抑えこもうとしない点です。作品の創造性は自分でコントロールできるので、ちょっとしたひねりやお遊びを感情表現やフィニッシャーに加えたければ、それが可能です。たとえば、「甦生のシーズン」に配信された感情表現「DIY鍛冶師」があります。元々はショットガンかピストルみたいなランダムな武器のはずだったのですが、当時テレストがとても流行っていたんです。だから、「そうだ、プレイヤーが製造する武器をテレストにしたらどうだろう。いつも壊れているし」と考えました。この感情表現の作成が最後はNPCチームにも刺激を与え、「甦生のシーズン」ではバンシーにテレストを持たせることになりました。ちょっとした楽しいクリエイティブの連鎖です。  

また、小さなイースターエッグを感情表現に導入しようとしたときもありました。最近は、「死者の祭り」のイベントカードといっしょに「リンゴ咥えゲーム」の感情表現を発売しました。最初にコンセプトを聞かされたとき、「そこからランダムなものが出てきたらどうだろう」と考えました。そこでまずオレンジから始めました。リンゴでいっぱいの樽の中からオレンジが出てきたら面白いでしょう?そうしたらだれかが、「ハイヴの虫も出したら?」って言い出して。その時点で3つか4つ、リンゴの代わりに低確率で出てくるものを追加しました。追加の開発コストがかからない感情表現の小道具は山ほどあるので、ランダムな確率でスポーンする小道具を1つや2つ追加すれば、付加価値が付くし、プレイヤーにはちょっとした刺激にもなります。 


Jonathan:Benにまったく同意で、Bungieで働くのは素晴らしい経験です。業界の単発仕事はたくさんこなしてきましたが、こんなに創造の自由を与えられたことはないし、正直、今Bungieで尊重してもらえてすごく嬉しいです。感情表現の制作に取りかかろうとして、思い付きのアイディアをメッセージで送ると、あら不思議!提案した感情表現が、Ben仕様にアップグレードするんです。チームメイトが互いの能力やアイディアを信頼していなければ、そんなことは不可能でしょう。  

私のキャリアは、Benと比べて若干回り道をしています。もともとは2011年に映画学科を卒業して、キャリアが始まりました。リアリティテレビ番組で少し働き、コマーシャルやコーポレートメディアの分野にも行ったのですが、私が好きだったのはショート映像を作ることでした。特にストップモーションなどのアニメーション作品です。数年後、自分は動画編集の仕事よりもそちらの方がずっと好きだということに気づき、アニメーションの修士号を取って過去は振り返らないことにしました。(3年間の大学院生活については煙に巻きます。) 

ここで重要なのは、2人のキャリアのスタートがずいぶん異なっているということです。実際、Bungieで働く多くの人が同じような傾向にあります。この業界に入りたいと思っている人々に、VFXやアニメーション寄りのアドバイスはありますか? 

Ben:ゲームの世界に入りたいと思っている人への一番のアドバイスは、とにかくモノづくりを始めることだと思います。これを読んで、「自分もスパークルの魔法使いになりたい」と思ったら、素晴らしいことにほとんどの基礎は無料で学ぶことができます。VFXチームと私が素晴らしいリソースをまとめたので、ゲームのVFXについて学びたい人はぜひ: 


Jonathan:アニメーションのキャリアを目指す人に、修士号は必要ないです。関連する学位は役に立つけれど、簡単にアクセスできるリソースは山ほどあります。私のアドバイスは、自分と似たような人々のグループで学ぶことです。Animation MentorやiAnimateなどのオンラインコースでもいいし、Discordでグループを作ってチュートリアルを視聴したり、プロジェクトでコラボしたりしてノウハウを学ぶのもよいでしょう。1人でも学ぶことももちろんできますが、他の人がいればモチベーションになり責任感を持つこともできるし、フィードバックもすごく貴重です。アニメーション作品の大多数は、個人ではなくアーティストのチームで制作されるので、グループで学習することは役に立つはずです。 

実際のところ、何かがゲームで使われない理由は千差万別です。でも使われるものは、私たちのチームがたくさんのスパークルをつけて輝かせて、「めちゃめちゃカッコいい!」と言わせてみせます。それ以外に大事なことなんてありません。最後になりますが、ここまで読んでくださってありがとうございます。私たちの作った感情表現を使って、皆さんやチームメイトの実績を称えるスクリーンショットまたは動画をぜひSNSで共有してください。楽しみにしています! 
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