追放者から追放者へ

2021年2月月3日 - Destiny Dev Team

追放者から追放者へ

「あのウォーロックからの酒瓶を取っておけばよかった。これまで一度も酔っぱらったことがないんだ――記憶の限りは」クロウは足先で地面を擦り、乾いた松葉が広がる森の地面に跡を残す。
 
「シティに着いたら、好きなだけエタノールを飲めますよ!」グリントが甲高い声で言った。「シティに行けば簡単に手に入るはずです」彼は静かにぐるぐると旋回しながら、データベースのアルコールに関する全ての資料を相互参照した。「ふむ… やっぱり、飲む量には注意したほうがいいかもしれません」

クロウは鼻を鳴らした。「お前が注意を促さなかったことがあるか?」

新米ガーディアンとそのゴーストは、EDZの険しい木々の向こうへと沈みゆく夕日を眺める。松の香りが漂う静けさに包まれ、クロウは突如として不安に駆られた。彼はシティの大群衆を思い浮かべた。何十万人もの人々。大勢の人々が、彼が忘れた過去の秘密を知っている。もし、クロウ自身が覚えていないということが知られたら、いったい彼らは―― 

「他にやってみたいことはありますか?」グリントの口調は軽いが、そのシェルの可動パーツは気遣うように寄せられている。「お祝いしないといけませんしね。あなたが望むことなら何だってできますよ。ただし――」

「ああ、グリント。分かってる。『あなたの顔は誰にも見られてはいけませんが』、だろう?」クロウはゴーストのデジタル音声を真似て言い、悲しげに微笑んだ。「何から挙げたらいいかも分からないな。まずは、やっぱり食べ物か? 銃の油やエーテルのような味のものばかり食べるのはもううんざりだ」
「それならちょうどいい場所を知っているぞ」背後の森から低く気だるげな声がした。 

クロウは身を翻すと同時に、いつでも撃てるようにピストルに手をかけた。だがすぐに緊張を解いた。白髪混じりのウォーロック、オシリスが松の木陰から現れたからだ。

「『飲んだくれラーメン』って店がある」オシリスのいつもは気難しい口調に少しだけ陽気な色が混じっている。「ロングボーイ・スペシャルを食べてみろ。なかなか美味いぞ」 

「ラーメンは写真で見たことがあるが…」クロウは怪訝そうに言った。「ミミズみたいなやつだろう?」 

オシリスはフードの下で笑みを浮かべた。「お前がシティの中に入る方法について話す必要がある。まずはその服装をどうにかしないとな」

クロウは胸を飾るスパイダーの紋章を見下ろした。「そのとおりだな」

「私の船に新しい装備を用意してある」オシリスは2人を森の奥へと手招いた。「日暮れを待つ間に着替えるといい」 

クロウはウォーロックの後に続きながら、再びシティの群衆を想像した。自身に圧しかかる人類の重みを感じる。大勢の人々と非難の目。迫り来る壁となって四方から迫ってくる…

木々を抜けて開けた地に足を踏み入れたところで、クロウの思考は途切れた。中央にはボロボロのジャンプシップが停まっている。

オシリスはタラップの手前で足を止め、クロウを振り返った。「いつかお前の正体や過去が明るみに出る時が必ず来る」

シティ中の全人類にじっと見られることを想像し、クロウは胸が締め付けられる思いがした。 

「その時が来たら…」ウォーロックは続けた。「この瞬間を思い出せ。追放者から追放者への助言だ。私を信じろ」

2人は手を握り合う。一瞬、自分が受け入れられる時が果たして来るのだろうかという疑問がクロウの頭をよぎった。   

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