生贄 - パート2

2020年11月月16日 - Destiny Dev Team

怒りの申し子

「ふむ」サギラが一筋の光でジャンプシップの操作デッキを照らしながら、彼らは黒い雫の中を転がっていた。遙か前方では星々が瞬いている。「あの静電磁場に何かあります…」

「何だ?」オシリスが聞いた。

「亜空間通信のようです。少々お待ちを」サギラがジャンプシップの通信電波を増幅させた。「カバルです」

「どこからだ?」オシリスは無意識のうちにキャンディコーンの山を足でどかして体を乗り出した。

「この星系外のどこかからです。かなり厳重に暗号化されていますが… 同じフレーズを繰り返しています。名前です。カイアトル?」

「どれだけ多くのカバルが今もガウルの墓標の上で覇権争いをしているんだ? お互いに灰になるまでやらせておけ」

「ネッスス、リーフ、EDZから反応がありました。彼女はリージョンを故郷に呼び戻して… いえ、そうじゃない… 自分の元に戻れと言っているのでしょうか? 彼らにカルスを掴まえて忠誠心を示すことを望んでいます。ただどうやらリヴァイアサンが行方不明のようです」

「奴らの血なまぐさい争いは続いている。カイアトルがリージョンを煽動しているなら、バンガードはその計画を知る必要がある」

「反応のうちのひとつが、ソリクスの細道の付近でカイアトルに捧げ物を渡そうとしています。奇妙なノイズも紛れています」

「このメッセージだ」とオシリスは言うと、画面上に映し出されているサギラのスキャン画像を示した。「カイアトルはそれを受け取るために使者を派遣した」 

「岸辺です。今ならまだ間に合いそうです」とサギラは言った。「盗聴しますか? それとも攻撃しますか?」

 「貢ぎ物の譲渡が終わってから奴らを叩こう。カバル帝国に盗聴していることを知られたくない」

壊れたいくつかの輸送ポッドから作られた粗雑なシェルターの中で大勢のカバルがひしめき合っている。割れ目から緑の光が漏れ出していた。カバルのロイヤルブルーの旗が、汚らしく泡を立てる泥の中に横たわっている。サギラとオシリスは、その沼地の遙か頭上にあるフォールンの遺跡からその様子を観察した。その夜の大半は、静かなまま時間が流れた。だが一つだけ例外があった。サギラが何度も確認を繰り返した。「岩の近くに集まっているだけでまだ動きはありません」

「忍耐力は美徳だ、サギラ」オシリスはリーフの空に向かって目を閉じると、暗黒の計画に関連する信号が届くのを待った。星々が見守る中、漆黒の宇宙が彼にのしかかっていた。彼はその膨大な時間の中に飲み込まれた。

夜空に悲鳴が響き渡った。 

オシリスは首を振って目を覚ました。目を開けると、岸辺がもや状のものに覆われていた。「サギラ、状況は?」

「彼らはまだそこにいます。18の生体反応。銃声は聞こえません。誰も身動きしていません。嫌な予感がします」

退屈な時間は素早く過ぎ去った。朝が訪れた。そこにはスコーンと小競り合いをしているカバルの姿はなかった。溶けたスラグ弾の痕が残る補強されたファランクスのシールドも、弾道を追跡するサイオンの姿もいなかった。

「動き出しました!」サギラが崖から身を乗り出した。正面にあるポッドドームの脱出口の掛け金が突然はじき飛び、ポッドの壁に叩きつけられた。そこから10名が出てきた。9名は不規則な暗い赤色をしていて、1名は鮮やかに青く輝いている。彼らは散らばるようにして岸辺に出てきた。

オシリスは目を擦った。「ようやくか」彼は割れ目からその様子を観察した。カバルたちは詰めるようにして跪いて円を作っている。その中心から石のようなものが突き出ている。 

「あの岩は何だ?」と彼は聞いた。

「かなり頑丈そうですね」

「サギラ… これは怪しいぞ」

「残念ながら、そのようですね」その瞬間、小さなゴーストが石に長距離センサーを照射した。「なるほど、岩ではありません。あれはハイヴです。生物学的には」

オシリスは光の羽を使って腐った水溜まりへと降り立った。サギラもすぐ後ろからついてきた。 

彼は方向を変えて開かれた扉の中へと向かった。両方の手のひらの中で天上の炎が踊っている。8名のカバルが座りながら眠っている。
カバルたちは突起物を取り囲んでいた。カバルの巨体が一つの肉塊となって振動している。膨張した圧力スーツから流れ出た魂の炎の残存物が水疱を作り出している。その水疱は固着していた――狂犬の目のように腫れ上がり、憎しみの叫び声を上げている。正面の装甲はハイヴの触手に浸食されていた。彼らの首をきつく締めている。その像の前にはスラグライフルが横たわっていた。

オシリスは彼らに気づかれることなく、両手を下げた状態でその中へと足を踏み入れた。サギラはカバルの境界線を横切ると、その突起物をスキャンした。

「不気味です。彼らは私たちの存在に気づいてもいません。気を抜かないようにしましょう」彼女はオシリスのほうを振り返った。「私がスキャンしてきた中でもこの岩は最も情熱的です」 

オシリスはハイヴの突起物に目をこらした。金属片のようなものがチラチラと光っている。彼の目に長く空虚な道が飛び込んできた。曲がりくねっている。彼はそこに誰でも見られるような大きな旗を掲げたかった。フェニックスの炎に照らされたビーコンだ。新たな炎の光の中に剣の山が姿を現した。その山が道を占拠し、彼の喉元へと迫った。彼はドーンブレードでそれに立ち向かった。酷い不協和音が彼の五感を破壊した。
 
私はお前が渇望している戦いだ。永遠を求めよ。血に染まった遺産だ。
 
「魂の炎の流れがそこかしこにあります」サギラの声が風となってオシリスに届く。サギラが彼をつついた。

お前が剣を引き抜く時、お前は私を引き抜くことになる。 

「今の声が聞こえたか?」オシリスは言葉は不明瞭だった。

私の旗に掲げよ

「何か聞こえているのですか?」サギラは彼の近くで浮かんでいる。

私を受け入れよ、光の戦士よ。そして死神となるのだ。

「囁きだ」彼の思考はもやに覆われていた。

1体のカバルが立ち上がり、オシリスのほうを見た。

「しっかりしてください。目を覚ましています」とサギラは言うと、危機を感じて姿を消した。

食うか食われるかだ。

カバルがよろよろと近づいてくる。オシリスは大きな炎を作り出した。その炎がポッドの中を焼き尽くす。跪いていたカバルはトランス状態から脱し、焼け付くような空気の中で立ち上がった。残りの7名のうち2名が、即座に空から降り注ぐファイアボルトの犠牲となった。オシリスは地上に降りると、動きの重いリージョナリーに向かってアークの波を放った。稲妻がポッドのマグネットシールドの影響を受けて内側に曲がる。彼らのスーツから圧力ゲルが吹き出すまで、その嵐の中に彼らを閉じ込めた。 

オシリスは大きく息を吐いた。カバルの体から立ち上る煙が彼の鼻孔をくすぐる。一帯は浄化されていた。恐怖、焦土、そして炭。

「サギラ…」


共依存

「全て話してくれる気になりましたか?」サギラが尋ねる。彼女はジャンプシップの操縦デッキの真上でホバリングしながら操作している。

「できるならそうしたい。カイアトルの使者を追跡していたことは覚えている。カバルを見つけるためだ。空は暗かった。そして… 炎と怒り。それが私を支配し、あらゆる考えを私の頭から追い出した」オシリスが崩れるように椅子に座った。「覚えていることが一つだけある。我々が追跡している暗黒の囁き声が聞こえた。まるで脊髄に刺さった針のようだった。恐らくそれが全ての原因だろう」  

彼が老境について考え込んでいると、過去の古い鉄の言葉が耳の中で響いた。

「すぐにシティは我々のような人物を必要としなくなるだろう。一匹狼のオシリス。我々は死に絶える。
お前に終わりの時が来たら、その光に見合うような最期を迎えてくれ」

「分かりました」とサギラは言った。その声から心配していることは明らかだったが、彼女はそれを隠した。「何度かスキャンをしました。長距離も、短距離も… ハイヴの活動が活発な地域を対象としました。これがリーフと無関係とは思えません」

「ペトラ、我々はどうしようもなく無知だった」オシリスが静かに思いを巡らす。「ハイヴは暗黒の中で力を蓄え、ガーディアンたちはエウロパに急行している。その前兆は彼女の言葉の中に埋もれていた。そして私にはそれが見えていなかった」

「塞ぎ込むのはそこまでにしましょう。まだこれからです。吉兆かもしれませんよ」

「中途半端な記憶と憶測で、バンガードの目をエウロパから引き離すことはできない。彼らとの再会からまだ日が浅い。人望など無いに等しい」

共鳴音が船のモニター上に輝点を打ち、オシリスの注意を引きつけた。「スキャンに何かが反応した」

「月です。ソリクスの細道の近くで見つけた信号よりもずっと強力です」

オシリスは姿勢を変え、顔を上げた。「お前の言うとおりかもしれないな。我々なら始まる前に終わらせることができる。エリスに繋いでくれ」

「先ほどからやっています。彼女が… 応答しないんです」

「それなら直接会おう」

「お待ちください。そんなのヘルマウスに自殺しに行くようなものです。あなたはそんなことができる体じゃない。回復してからにしましょう」

オシリスが考え込む。サギラの言うとおりだ。睡眠も不足し疲れ切っていた。「なら方向転換だ」

「オシリス、ペトラとバンガードには既に必要な情報を送っておきました。地球に向かうべきです」

「我々の敵が何であろうと、それは太陽系の腹の下で勢力を拡大している。岸辺にはその過程を知っている者がいる。会話程度なら今の私でも問題ないはずだ、サギラ」

「タワーにも同じように助けてくれる人たちがたくさんいるはずです」

オシリスが彼女をにらみつけた。「私は手足がおぼつかない病人ではない!」彼は操縦桿を握りしめた。「方向転換しろ、でなければ私が操縦する」

「そのスパイダーという男が答えを知っているといいのですが」とサギラが言った。

「聞いた話によると、いかに説得力があるかが重要らしい」とオシリスはそう言うと、エリクスニー・アソシエイトに案内されて深紫色のカーテンを通り抜け、スパイダーの住居に入った。岸辺の巨大なボスが、目の前でゆったりと腰掛けている。

「ようこそ、尊敬されしオシリスよ。俺の部屋に来たのは初めてだろうが、お前の噂はよく聞いている」スパイダーは8本の指で格子を組んだ。不快なスタッカートの間に彼の声が入り込む。「お前の送った文献は… 非常に興味深いものだった。ただ時代遅れだ」

スパイダーが笑った。「既に専門家に研究を行なわせている。あの… 結石についてな。ただ、俺は絶対に… 何と言ったかな。そう… 『贈り物にはケチはつけない』だ」

彼のアソシエイトたちが部屋の隅を走っている。驚くような早さで荷物が手から手へと渡される。オシリスは彼らの動きを目で追った。勲章を付けたアソシエイトがスパイダーに近づき、彼の近くで足を止めた。

「どうした、アーラ? 客人との会話の邪魔をするなんてお前らしくないな」

アーラはオシリスを一瞥してから、エリクスニーの言葉で素早く伝えた。スパイダーは大きな拳を叩きつけた。「なら探しに行け!」

スパイダーがオシリスに視線を戻すと、アーラは慌てて立ち去った。「すまないな。急ぎの仕事ばかりなんだ。何しろ…」というと彼は軽く上を示した。「…色々なことがあったばかりだからな」彼は咳をすると、エーテル吸引器を掴んだ。

「トラブルを抱えているのはカバルだけじゃないみたいですね」サギラは質問すると、オシリスの目の前に移動した。「私がエリクスニー語を話せることは知っていますよね?」

彼女はカバルの救難信号と、カイアトルの偵察部隊が出した野営地の封鎖命令を抜粋して再生すると、虐殺現場、墓、そしてカバルの要塞の写真を見せた。「それがこの原因であるなら、あなたのアソシエイトたちも間違いなく… 何て言うんでしたっけ? そう、ハエのように叩き潰されてしまいます」

「賢いオシリスと聡明なる小さな光よ」とスパイダーは呟いた。

「サギラ」と2人は正すように言った。

「そうだったな。俺たちが協力すれば… 互いの利益になりそうだ」

オシリスが歩み出た。「そっちは今どんな問題を抱えているんだ? 岸辺の主、スパイダーよ」

スパイダーはその称号をためらうことなく享受した。「結石がハイヴのものであることは知っている。ここにいる者たちがオリックスの旗に火を放っていることもな。奴のワームの屍が、土星の環の中で目覚めたことも知っている」スパイダーは4本の腕をすくめた。「俺の影響力が及ぶのは岸辺の土手までだ、それは間違いない… だがお前は違う」


恐れるな

オシリスは短くなった杭にウィザードの頭を突き刺した。鮮血に濡れたハイヴの印がそこを取り囲んでいる。ドレッドノートのコンソールが息を吹き返し、彼の貢ぎ物を受け入れた。 

ケイドの古いトランスマットゾーンは既に壊れており、ダンタリオン・エクソダス VIの衝撃によって空いた巨大な穴はまだ塞がれていなかった。新たに生まれたスロールが通路を徘徊していたが、中に入るのはそれほど難しくなかった。彼らは若かった。無限の森の中を1世紀近く航行してきたことで、オシリスのスキルは研ぎ澄まれていたが、それを披露する機会はまだ訪れていなかった。

ドレッドノートのシステムはいわば生ける記憶だ――数々の歴史を物語る年代記であり賛美歌とも言える。それはまるで、不安定な接続と失いつつある思考力に苦しめられている、アイデアを失ったラットキングだ。一方でアッカは修復不可能なダメージを受けて、ゆっくりと、最期の死を迎えようとしていた。だがそこには学ぶべき知識が存在していた。オシリスはバンガードの高官のために、コンソールからデータを引き抜くようにサギラに命じた。

「これほど不愉快なものは初めてです、触りたくありません。書き取らせてください」

オシリスは鼻であしらうと、頭を掴んだ。彼はオリックスの死後のハイヴの動きを詳しく話した。彼らは内的な抗争が原因でバラバラになって壊滅した。続けてサバスンのことを話した。彼女は追放され、異端者の烙印を押されて焼かれた。オリックスが死ぬと多くのハイヴが彼女に指示を求めた。その多くは、暗黒が太陽系を侵攻した際に逃亡し、サバスンも姿をくらませた。彼女は今も戦いの獣に追われている。彼女の追跡者に関する詳しい情報はここにはない。まだ確実なことが分かっていないからな。執行司祭はクロタの失われた捨て子たちをウィッチ・クイーンから奪い取ろうとしている。統一を成し遂げるために。裁きを受けさせるために。栄光をもたらすために。月は彼女のイメージに従って作り替えられるだろう。全てをシヴ・アラスに捧げよ。彼女の歌う刃の闇の果てに全てを捧げよ。

私は歓喜の喧噪だ。私は平和の使者だ。お前は私の旗を知っている。 

「シヴ・アラス」とオシリスは言った。衝動的に言葉を発した。彼がウィザードの頭から手を離すと、エメラルド色の煙がその穴から出てきた。

オシリスは膝から崩れ落ちた。「これは恐らく我々の追っていたエコーだ。これは彼女の予言だ。その声は暗黒に鳴り響き、戦争の到来を告げている」

「ハイヴの戦神。これは悪い知らせです」とサギラが言った。

「三女の登場か。ようやく我々の前に現れた。彼女のチャンピオンは、月にいるクロタの他の姉妹たちを追放しようとしている。そこが我々の目的地だ」

月の裂け目へと入った。彼らは信号を追跡して永劫の深淵に向かった。数多くのナイトメアの間を通り抜けた。 

彼は長い間、それに立ち向かった。大いなる鋭利な存在――その宵の先端が、彼の精神の裏側でうごめいていた。  

「驚きましたか?」サギラがからかうように言った。「そこまで悪くないかもしれない」彼は力なく笑った。 

彼らは進んだ。 

オシリスは月のピラミッドの影を覆う絹のクモの巣を引き裂いた。真鍮が裂け目の奥深くにあるウィッチとウィザードの集会を彩っている。シヴ・アラスの巨大な印と直線を成している全ての先端が、刃で飾り付けられた結石の真上に向けられている。それは遠くの未知の宇宙空間から投影された彼女の意志だった。その像の足下に巨大なナイトがいた。熱い焼き印のせいで黒焦げになったタペストリーを身にまとっている。

「あそこだ」とオシリスが囁いた。

「真紅の宮廷です」とサギラは割れた声で言った。

「クロタの子供たちも、奴らの同胞も、一網打尽にできる」

「そんな無謀な真似をしてどうするつもりですか? ここではトランスマットは使えません。それに殺されるだけでは済まないでしょう。光を奪い取られてしまいます」

「奴らは全員ここにいるんだ、サギラ。一か所に集ってな」

「あなたはハイヴの貴族よりも価値があります。増援を待ちましょう。上に行って助けを呼んできます」

「駄目だ。今すぐ阻止する。ここで終わらせる」オシリスは眼下の集会を見た。「これは決定事項だ」

「それはあなたが決めることではありません!」

オシリスはサギラのほうを見た。「助けは好きに呼べ。ただバンガードを待っている余裕はない。近いうちにまた会おう。増援も一緒な」
「あなたが行くのなら私も行きます」彼女は素早く彼のアーマーの下に隠れた。これは決定事項だ。彼らは一緒にハイヴに戦いを挑んだ。

オシリスの背中でソーラーの翼が燃えている。それぞれの手に黎明の刃が握られている。彼の炎が作り出した惨状を見て、ハイヴたちが四方八方に逃げ出した。ヴォシュルと彼女の2人の姉妹、イシュラとエイリアクスはフェニックスに立ち向かった。姉妹たちは最初の呪文を唱え終わる前に灰になった。彼はその場に破壊をもたらした。15人の貴族たちは防御を固める前に消し炭になった。

相反する剣のごとく笑え。

オシリスが空中を移動していると、暗黒の力の短剣が彼の耳元をかすめた。彼の体から黄金のエコーが流れだし、逃げ出したハイヴを切り刻んで獲物をずぶ濡れにした。クロタの最後の娘、キノックスは、岩の裂け目の間を逃げ惑い、彼女の息子のウルグ・ウリンと彼のナイト部隊は彼女を守るためにシールドを構えていた。オシリスは片方の剣を手のひらに収めると、ボイドの特異点を作り出してノヴァボムを投げつけ彼らを消滅させた。もう1本の剣を持ちながら彼は急降下した。地面に降り立つと、輝く泉が発生しその周りに金色の複数のエコーが姿を現した。 

貴族たちは金切り声を上げてスロールを突撃させた。火の柱とアークが彼らを引き裂く間、オシリスはボイドを通ってエコーからエコーへと移動した。彼らの動きが止まった。彼は煙を上げる外殻をまたぐと、炎を彼らの主人へと向けた。 

オシリスはその虐殺を大いに楽しんでいた。シヴ・アラスの印が彼の熱狂と貴族たちの死を飲み込んだ。
恐怖の絶叫のように笑え。

彼女の像が周りから浮かび上がって見える。執行司祭が無傷のシヴ・アラスの結石の足下で待っていた。

オシリスのエコーが集まり、彼が再び姿を現した。「私と戦え!」と彼は叫ぶと進み出た。

シヴ・アラスの像が衝撃波を発生させ、裂け目に雷鳴を轟かせた。その衝撃はオシリスの泉を破壊して、石床から彼を吹き飛ばした。彼は後ろにあった岸壁に背中を強く打ちつけた。

「何だ?」衝撃がその思考を中断させた。未知の力に抗おうとしたが、どうにもならない。

捧げ物を燃やせ。私はそれを受け入れる。

シヴ・アラスの意志が彼の光の圧力を押しつぶした。炎は彼の肉体の中に封印された。体を麻痺させる杭に打たれ、彼の体は岩に磔になった。くぼんだキャンバスの中で彼のイメージが歪んだ。その中心には執行司祭がいた。影が浸食し、彼の力の境界線を消していく。

オシリスは自分の核の輝きに意識を集中させた。その中では炎がうねっていた。無数の金のエコーが彼から波紋のように広がり、シヴの楔を探り、弱点に圧力を掛けている。太陽が歌い、その影を拒絶した。彼は隙を見て、手の枷を外すと、カオスの混沌を放った。アークの光線がシヴの印を引き裂いた。魂の炎のかけらが飛び散り、シヴ・アラスの像にいくつもの割れ目ができた。

彼女はまったく動じなかった。

私を拒否してみろ、光の戦士よ。
彼女の意志はこれまで以上に彼を圧倒していた。 

執行司祭は進み出た。その手から巨大なクリーバーが力なくぶら下がっている。怪物はオシリスから視線を逸らさずに、彼の両側の石にルーンを刻みつけた。彼に向かってうなずくと、印のほうを振り返った。 

「全てをシヴ・アラスに捧げよ。戦争の支配者に捧げよ。永遠にだ」その声はやや甲高くて汚れていた。 

ルーンが道化師の目の輝きの中で輝いている。 

「オシリス」サギラの声が雑音となって彼の耳に届いた。「どちらかが何として彼らに警告しないと」

「すまないサギラ… 逃げろ…」拘束されている彼の声は小さかった。

執行司祭はオシリスの頭上にある絶壁の岩に剣を突き立てた。結石が眩い炎を吹き出す。

「安らかに死ね、オシリス」執行司祭は頭を下げると、視界から消えて月の奥深くへと向かった。

光の束が彼の肌から漏れ出し、血液に彩られながら、頭上に埋め込まれた剣の周りに集まっている。まるで糸巻き機のようだ。

サギラの声が囁き声となって聞こえてきた。「私が必ず助けます」

お前は私によって生かされている。

「セイントに… 私の船を渡してくれ」と言うと、オシリスは息を吐いて目を閉じた。彼は無数の順列の中にいる自分の姿が見えた。どの道にも、命の光がおぼろげに見える。彼はそこからあらゆる情報をかき集めた。刺激を与えられるほどではないが、懐古のもやの中で生き続けるには十分だった。ある時は燃える戦士となり、最も長い夜の恐怖を追い返した。またある時は、無限の森の頂上で寝ずの番をするガーゴイルと化した。年老いた灰色の監視者として有能な門弟たちを見守り続けた。 

そして多くの死を重ねた。

ただ、オシリスには喜びを感じられる瞬間があった。彼は闘争とは無縁の時間を見つけた。彼はセイントを見つけた――暖かく、平穏な夢だ。その平和は彼の望んでいたものだった。セイントがいれば満足できる未来が訪れたかもしれない。 

行動の原因と原因の合間に、空虚な瞬間が数多く存在していた。彼はサギラに自分を看取らせたくなかった。彼の忠実な仲間。彼を導く光。彼の希望、彼の慈愛。「サギラ。多くの人生を歩む中で… お前は常に私の側にいてくれた」

彼の光が消えていく。

「オシリス、なぜ私の言うことを全然聞かないのですか?」彼女が彼の前に姿を現した。

「お前は何を――」 

「黙りなさい! 私の言葉を聞きなさい!」彼女の虹彩が光で輝いている。「あなたは全てを失ったわけではありません。暗黒の中で希望を失わないでください」彼女が発光した。

オシリスはためらうように言葉を絞り出した。「やめろ」彼はいずれ理解するだろう。彼女はそれを知っていた。

眩い光がサギラのコアから発生し、彼女はバラバラになった。光の波が裂け目の端々まで広がっていく。彼女の犠牲により、シヴ・アラスのあらゆる痕跡が浄化された。印は消された。彼女の像を支えていた結石は破壊された。  

オシリスは息を吸った。孤独だ。

その後何日もの間、サギラの庇護の光は、ピラミッドの影の中で力強く輝き続けた。
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