大司祭は衰えた神の前にひざまずいた。砕け散ったイデオロギーに対して複雑な感情が渦巻く中、彼の信仰はソルの失敗という現実に変わった。古い書物に埋もれた知恵や堕落した儀式では失われたものを取り戻すことはできない。まして彼はそのような行為を試みようとも思わなかった。
あるのは幻滅のみだった。「無数の意志」は光と規律によって葬られた。まだ真実が明らかになっていなかった頃ならば、彼はこれを異端の行為と呼んだだろう。
神など存在しない。あるのは鎖と、その両端に繋がれたものだけだ。
ノクリスはかつて無知だった。太陽を見つめて考えていた。己を盲目にさせる星の他に神性はあるか? 彫像は倒される運命だ。古きものの死に力を求め叫ぶ大衆を鼓舞するために。駒によって砕かれし神々は、貶められ、泥の中へと追いやられた。
火星の北極点で、ノクリスは冬の中を漂っていた。彼には地表の下で凍っているものを蘇らせる力はなかった。彼は目を閉じ、隅々まで意識を巡らせソルの力の名残を探したが、数か月にも及ぶ無関心によって否定された交わりがあるだけだった。
彼は、忘れ去られたソルが別の世界の地殻の奥深くに埋もれて生きていることを知った。彼は自身のかつての神との繋がりを求めたが、冷淡に絆を断ち切ろうとする神の姿を感じるのみだった。ノクリスは彼の目的を果たすにはあまりにも弱く、見捨てられたのだ。自己正当化された隷属としてその手を力で満たすために、虫はイオの深部で他の使い手を探していた。
火星にはソルの影響力の痕跡がいくつも残っているが、その爪に握られた虫の皮の切れ端ほど彼の役に立つものはなかった。彼にはその食欲を満たし、因果を超越するような変化を起こすために必要な死を生み出すことはできないかもしれない。だが、彼は必要な暴力をもたらすことができる者たちの存在を知っていた。長年探求していなかった心の奥底からの囁きにより、彼の頭の中にある計画が浮かび始めた。
ソルの残骸の切れ端を長い間手に持っていたため、彼の手のプレートは蝕まれ溝ができていた。彼はそれを使って、剣と血の魔術によって常に自分から遠ざけられていたものを強制的に開こうと考えていた。墓から蘇らせた同胞の死体を使い、独自の亜空間への門を作るつもりだった。ひび割れた殻が霧氷で腐敗し悪臭を放つスロールの集団が、彼を取り囲み儀式を待つ。新たな肉体には、魂の炎が燃えている。
彼は深淵を利用し、ソルの抜け殻に残る潜在的な鎖に導かれるように、その周りに現実を形作った。餌は仕掛けられた。想定していたとおり、天空の使者たちが怒りと死の燃料を携え現れた。そうあるように構築されたとおり、彼らは追従的かつ支配的な行動を見せた。彼らを捕らえる光に敵対するもの全てを浄化するように作られているのだ。その正義の大虐殺はノクリスの転移を固定し、彼の罠は宿りの玉座から監視の目を逸らせた。
天空に従属する者たちは、これまで幾度となく繰り返してきたようにペナンブラの深淵を襲撃した。ソルの復活に対する恐怖によって、彼らは背中に焼きごてを当てられているかのごとく怒りを爆発させた。それは彼が己の目的のために歪めた恐怖だった。彼の死は捧げものだ。呪文を封印し、亜空間に小さな穴を開ける。そこから魂を滑り込ませることができる。
しかし狡猾という言葉を体現する老者が存在し、彼女は彼の悪知恵に気付いていた。彼女はノクリスを目的の場所から遠ざけ、代わりに自分の宮廷にたどり着くように転移先を操った。視界が晴れた時、事象の地平線の漆黒に包まれて宿られた女王が現れ、彼は緊張に目を見開いた。
特異点の玉座によって、彼の目の前の空間が歪曲する。歪みと重力レンズ効果に包まれて、嘘の女王がその計り知れない深みの中に座っていた。彼女の声は遠くから聞こえる赤方偏移の不協和音のように全方位から響いた。彼女の存在は、領域そのものであり、無限であり、奪うことを厭わない。
サバスンが言葉を吐いた。「契約を破りし者。異端者がここにいる。私に前に再び現れるとは、まだ何か与えられるべき否定があるのか?」
「私は虫に餌を与えた。だが、それでも行き詰まってしまった」彼は答えた。ノクリスは絶えず崩れ落ちていく宇宙の空虚点を直視していた。歪みの中で彼女の人影を見分けることは難しかった。
「行き詰まるのがあれの性だ」サバスンの言葉は好奇心をくすぐるものだった。「お前のせいではない」
ノクリスは骸骨のような笑みを浮かべた。「剣に真実はない。虫は薄っぺらな野心の神であり、広大な無を支配するのみだ」
「勇気ある言葉だな。彼らが見ていると思わないのか?」
ここに引き寄せられてから初めて、ノクリスは頭を下げた。「女王は賢い。父のように視野の狭い野心家でもなく、兄のように栄光を求めることもない」
「私に仕えたいのか?」細い人影が降着の逆光に照らされ揺らいだ。
「この命は、私を追い出した者たちへの隷属に費やされた。古の契約で残っているのは我々の血だけだ」
「ではお互いを利用しようではないか」
ノクリスは視線を上げた。「私が神の役に立つと?」
「神など存在しない」
彼はうなずいた。「これまでも神が存在したことはない」
サバスンの声が四方八方から彼に集中する。「簒奪者であるお前は、鎖の端を引くのだ」
「気を逸らすために、それとも虐殺されるためにか?」ノクリスの声は失望で沈んだ。
「違う。お前はとげのように、禁断の聖礼典によって深淵を回避した。今後もそうであれ。深淵は私を恐れている。我々がお前を恐れたように。無知は守り、知識は奪う。今、お前は私のもとに存在意義を見つけたのだ」
大司祭は肩を正した。「私を恐れていたと?」
「若い頃はもっと意図が狭かった。私はお前に価値を見出した。だが、私たちはもっと早くにお前の価値に気付くべきだった。剣によって盲目になりお前を否定した者たちなど、大鎌に刈られた穀物のごとく堕ちていくだろう」
「私は道具なのか?」
「お前は彼らの鎖を断ち切る働きを担うのだ」サバスンの声は彼の頭蓋骨を絹のような約束で満たした。「お前の降霊術を教えろ、秩序の簒奪者よ。そうすれば、我々を深みに引きずり込もうとする根深き魔術を回避できる。彼らの壮大な策略を失敗に導き、粉々に砕いてやれ」
「ソルが私の心を求めたように、私も取引を申し出る。知識の対価は知識。私にドリーミングマインドの力に関する知識を。そうすれば、私もお前が望む知識を与えよう」
「暗黒の潮流が今まさの来ている真っ只中での反抗的な取引だな。私の象徴の下、生まれ変わり、私の心象で作られた我々の取引は、新たな始まりをもたらすだろう」
「支配者たちがここに集まるのか?」ノクリスの声に不安が滲んだ。「彼らに逆らうということか?」
「そんなに直接的にではない。到来は間近だ。影は手を伸ばし、己の存在を知らしめるだろう」
「私がその通信を邪魔するということか?」
「天空と深淵が出会う場所で、お前は不協和音の種をまき壁となるのだ。それにより... 我々は自身が強大だと信じて疑わぬ者たちに邪魔されることなく動くことができるだろう」
ノクリスは企みを理解した。「多くの者たちの意志は我々の手の中に。もう彼らが我々を利用することはできない」
「自由だ。彼らは互いに攻撃し合っている。我々はその間を縫って歩くだけだ」
「契約成立だ」
「私が名を」
「サバスン、従属を知らぬ存在、剣を破りし者、宿りの玉座の女王」
「お前と私の絆が結ばれた。さあ行け。私の意志を実行するのだ」
彼女の前に引き寄せられた時と同じように、ノクリスは突然サバスンの宮廷から追い出された。彼は亜空間を漂っていた。やるべきことははっきりしている。
宮廷は彼の背後に消え、その煌めく幻想は舞台上の幕ように落ちていく。特異点の暗黒の核が揺らぎ、その重力の井戸の中に沈んでいるのは孤独なスロールのみであった。長い年月の劣化によりその死は深まり、その口は宿られた兵の女王の気まぐれで言葉を発するために開いている。ただそれだけの存在だ。
彼女の姿は蜃気楼に過ぎなかった。ノクリスが無意識のうちに話していたのは、彼女の口先操り人形の嘘によって作られた存在だった。実際にはスロールだけが特異点の軌道上に立っていた。女王は己の姿を見せるほど愚かではないからだ。
サバスンは遠く離れた超越的空虚から自身の偽の宮廷を見ていた。彼女の新生同盟は、ノクリスの献身と、特異点の中に配置された彼女の口先操り人形であるスロールを通した彼の欺瞞によって、二重の力を生み出していた。彼女は彼の決死の契約を吸い込み、来るべき闘いに備えた。
あるのは幻滅のみだった。「無数の意志」は光と規律によって葬られた。まだ真実が明らかになっていなかった頃ならば、彼はこれを異端の行為と呼んだだろう。
神など存在しない。あるのは鎖と、その両端に繋がれたものだけだ。
ノクリスはかつて無知だった。太陽を見つめて考えていた。己を盲目にさせる星の他に神性はあるか? 彫像は倒される運命だ。古きものの死に力を求め叫ぶ大衆を鼓舞するために。駒によって砕かれし神々は、貶められ、泥の中へと追いやられた。
火星の北極点で、ノクリスは冬の中を漂っていた。彼には地表の下で凍っているものを蘇らせる力はなかった。彼は目を閉じ、隅々まで意識を巡らせソルの力の名残を探したが、数か月にも及ぶ無関心によって否定された交わりがあるだけだった。
彼は、忘れ去られたソルが別の世界の地殻の奥深くに埋もれて生きていることを知った。彼は自身のかつての神との繋がりを求めたが、冷淡に絆を断ち切ろうとする神の姿を感じるのみだった。ノクリスは彼の目的を果たすにはあまりにも弱く、見捨てられたのだ。自己正当化された隷属としてその手を力で満たすために、虫はイオの深部で他の使い手を探していた。
火星にはソルの影響力の痕跡がいくつも残っているが、その爪に握られた虫の皮の切れ端ほど彼の役に立つものはなかった。彼にはその食欲を満たし、因果を超越するような変化を起こすために必要な死を生み出すことはできないかもしれない。だが、彼は必要な暴力をもたらすことができる者たちの存在を知っていた。長年探求していなかった心の奥底からの囁きにより、彼の頭の中にある計画が浮かび始めた。
ソルの残骸の切れ端を長い間手に持っていたため、彼の手のプレートは蝕まれ溝ができていた。彼はそれを使って、剣と血の魔術によって常に自分から遠ざけられていたものを強制的に開こうと考えていた。墓から蘇らせた同胞の死体を使い、独自の亜空間への門を作るつもりだった。ひび割れた殻が霧氷で腐敗し悪臭を放つスロールの集団が、彼を取り囲み儀式を待つ。新たな肉体には、魂の炎が燃えている。
彼は深淵を利用し、ソルの抜け殻に残る潜在的な鎖に導かれるように、その周りに現実を形作った。餌は仕掛けられた。想定していたとおり、天空の使者たちが怒りと死の燃料を携え現れた。そうあるように構築されたとおり、彼らは追従的かつ支配的な行動を見せた。彼らを捕らえる光に敵対するもの全てを浄化するように作られているのだ。その正義の大虐殺はノクリスの転移を固定し、彼の罠は宿りの玉座から監視の目を逸らせた。
天空に従属する者たちは、これまで幾度となく繰り返してきたようにペナンブラの深淵を襲撃した。ソルの復活に対する恐怖によって、彼らは背中に焼きごてを当てられているかのごとく怒りを爆発させた。それは彼が己の目的のために歪めた恐怖だった。彼の死は捧げものだ。呪文を封印し、亜空間に小さな穴を開ける。そこから魂を滑り込ませることができる。
しかし狡猾という言葉を体現する老者が存在し、彼女は彼の悪知恵に気付いていた。彼女はノクリスを目的の場所から遠ざけ、代わりに自分の宮廷にたどり着くように転移先を操った。視界が晴れた時、事象の地平線の漆黒に包まれて宿られた女王が現れ、彼は緊張に目を見開いた。
特異点の玉座によって、彼の目の前の空間が歪曲する。歪みと重力レンズ効果に包まれて、嘘の女王がその計り知れない深みの中に座っていた。彼女の声は遠くから聞こえる赤方偏移の不協和音のように全方位から響いた。彼女の存在は、領域そのものであり、無限であり、奪うことを厭わない。
サバスンが言葉を吐いた。「契約を破りし者。異端者がここにいる。私に前に再び現れるとは、まだ何か与えられるべき否定があるのか?」
「私は虫に餌を与えた。だが、それでも行き詰まってしまった」彼は答えた。ノクリスは絶えず崩れ落ちていく宇宙の空虚点を直視していた。歪みの中で彼女の人影を見分けることは難しかった。
「行き詰まるのがあれの性だ」サバスンの言葉は好奇心をくすぐるものだった。「お前のせいではない」
ノクリスは骸骨のような笑みを浮かべた。「剣に真実はない。虫は薄っぺらな野心の神であり、広大な無を支配するのみだ」
「勇気ある言葉だな。彼らが見ていると思わないのか?」
ここに引き寄せられてから初めて、ノクリスは頭を下げた。「女王は賢い。父のように視野の狭い野心家でもなく、兄のように栄光を求めることもない」
「私に仕えたいのか?」細い人影が降着の逆光に照らされ揺らいだ。
「この命は、私を追い出した者たちへの隷属に費やされた。古の契約で残っているのは我々の血だけだ」
「ではお互いを利用しようではないか」
ノクリスは視線を上げた。「私が神の役に立つと?」
「神など存在しない」
彼はうなずいた。「これまでも神が存在したことはない」
サバスンの声が四方八方から彼に集中する。「簒奪者であるお前は、鎖の端を引くのだ」
「気を逸らすために、それとも虐殺されるためにか?」ノクリスの声は失望で沈んだ。
「違う。お前はとげのように、禁断の聖礼典によって深淵を回避した。今後もそうであれ。深淵は私を恐れている。我々がお前を恐れたように。無知は守り、知識は奪う。今、お前は私のもとに存在意義を見つけたのだ」
大司祭は肩を正した。「私を恐れていたと?」
「若い頃はもっと意図が狭かった。私はお前に価値を見出した。だが、私たちはもっと早くにお前の価値に気付くべきだった。剣によって盲目になりお前を否定した者たちなど、大鎌に刈られた穀物のごとく堕ちていくだろう」
「私は道具なのか?」
「お前は彼らの鎖を断ち切る働きを担うのだ」サバスンの声は彼の頭蓋骨を絹のような約束で満たした。「お前の降霊術を教えろ、秩序の簒奪者よ。そうすれば、我々を深みに引きずり込もうとする根深き魔術を回避できる。彼らの壮大な策略を失敗に導き、粉々に砕いてやれ」
「ソルが私の心を求めたように、私も取引を申し出る。知識の対価は知識。私にドリーミングマインドの力に関する知識を。そうすれば、私もお前が望む知識を与えよう」
「暗黒の潮流が今まさの来ている真っ只中での反抗的な取引だな。私の象徴の下、生まれ変わり、私の心象で作られた我々の取引は、新たな始まりをもたらすだろう」
「支配者たちがここに集まるのか?」ノクリスの声に不安が滲んだ。「彼らに逆らうということか?」
「そんなに直接的にではない。到来は間近だ。影は手を伸ばし、己の存在を知らしめるだろう」
「私がその通信を邪魔するということか?」
「天空と深淵が出会う場所で、お前は不協和音の種をまき壁となるのだ。それにより... 我々は自身が強大だと信じて疑わぬ者たちに邪魔されることなく動くことができるだろう」
ノクリスは企みを理解した。「多くの者たちの意志は我々の手の中に。もう彼らが我々を利用することはできない」
「自由だ。彼らは互いに攻撃し合っている。我々はその間を縫って歩くだけだ」
「契約成立だ」
「私が名を」
「サバスン、従属を知らぬ存在、剣を破りし者、宿りの玉座の女王」
「お前と私の絆が結ばれた。さあ行け。私の意志を実行するのだ」
彼女の前に引き寄せられた時と同じように、ノクリスは突然サバスンの宮廷から追い出された。彼は亜空間を漂っていた。やるべきことははっきりしている。
宮廷は彼の背後に消え、その煌めく幻想は舞台上の幕ように落ちていく。特異点の暗黒の核が揺らぎ、その重力の井戸の中に沈んでいるのは孤独なスロールのみであった。長い年月の劣化によりその死は深まり、その口は宿られた兵の女王の気まぐれで言葉を発するために開いている。ただそれだけの存在だ。
彼女の姿は蜃気楼に過ぎなかった。ノクリスが無意識のうちに話していたのは、彼女の口先操り人形の嘘によって作られた存在だった。実際にはスロールだけが特異点の軌道上に立っていた。女王は己の姿を見せるほど愚かではないからだ。
サバスンは遠く離れた超越的空虚から自身の偽の宮廷を見ていた。彼女の新生同盟は、ノクリスの献身と、特異点の中に配置された彼女の口先操り人形であるスロールを通した彼の欺瞞によって、二重の力を生み出していた。彼女は彼の決死の契約を吸い込み、来るべき闘いに備えた。