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2人のための塹壕

地下の闇に消えゆく階段。電球が音を立ててちらつき、その明かりが部屋を照らす。中央にはプラットフォームが続き、その両脇には放置されたデスクとコンソールが並んでいる。埃に覆われたデータ貯蔵ベイが目を覚まし、機械が立てる小さなクリック音と回転音が空気を満たす。


部屋の中央にある円形に吊られた膨大な数のモニターに、コードが流れるように映し出される。ランダムに流れていたテキストが複数の画面に表示されて眩い黄金のオーブの形を成し、一瞬で部屋をスキャンしてから入り口に焦点を合わせた。ラスプーチンの目が待っている。


彼はただひたすらに待ち続ける… Bungieのシニアコンセプトアーティストが電話会議に参加するためにAlt+Tabのショートカットで画面を切り替えると、ディマ・ゴルヤイノフのモニターからラスプーチンの塹壕の映像が消えました。午後3時30分、彼のチームは毎日この時間にコーヒー休憩を挟みます。「お喋りの時間です」と彼は言います。「普段は皆仕事に打ち込んでいるので、集まって会話を楽しむ時間を取るように意識しています。創造力も刺激されますしね」


ディマにとって、同僚たちや、ゲームとは無関係の分野からインスピレーションを得るのは日常茶飯事のことです。彼がDestinyの仕事に携わる上で、このアプローチは大いに役立っていると言います。特に、名士のシーズンで対人スキルに乏しい伝説的キャラクターのラスプーチンとプレイヤーの距離を縮められるような空間のデザインという仕事を任された時にも、このアプローチが功を奏しました。


その時点のDestinyの物語ではラスプーチンとバンガードの関係が非常に希薄になっていたことを考えると、難しい仕事でした。しかし、シティ上空に新たな脅威が現れたことで、両者は選択を迫られることになりました。力を合わせて生き残るか、孤独に滅びるかという二択です。生き残るという選択肢は、ガーディアンにとっては今までにない方法でラスプーチンと手を組むことを意味していました。


Bungieチームは、ラスプーチンが同盟に同意するのは難しいことではないと分かってました。問題はもう一方です。ガーディアンに、命を預けてもいいと思えるほど彼を信頼してもらうのは簡単なことではありません。作家、デザイナー、エンジニア、そしてディマをはじめとするアーティストの力が試されることになりました。こうして、過去最強の軍事情報知能を、もう少し人間味のある存在へと変える取り組みが始まったのです。

新たなアプローチ

ディマはグラフィックデザインとコンセプトアートを融合させたユニークなスタイルを得意としており、それはDestiny 2の中でも垣間見ることができます。壁に掛けられた看板から、架空の組織や鋳物所のロゴや図像まで、今やDestinyの世界構築とは切っても切り離せない美学となっています。




全く異なる方向からゲーム業界に入ることになったのは、先端技術大学でゲームアートではなく、グラフィックデザインとデジタルメディアを専攻するという選択をしたことがきっかけだったと彼は言います。「ゲームアートプログラムは、ゲームから直接得たインスピレーションを課題に結び付けることに重点を置いていました。それが間違いだとは全く思いませんが、グラフィックデザインのようなプログラムをやった方が、よりユニークなスキルを得られるのではないかと感じたんです。グラフィックデザイン、インダストリアルデザイン、建築、漫画など、ゲーム以外のものにも元から興味があり、そういった分野をコンセプトアートに取り入れたいという思いがありました」


インスピレーションを得ているゲーム以外のあらゆる分野の中でも、ダークでミステリアスな中世のデザインがDestinyに合っていると感じるとディマは言います。「中世デザインの多くはオカルト的な印象を与えます。解剖学を無視した感じの素朴な描き方ですが、それでも形になっているんです。宇宙を舞台にしたダークファンタジー劇にはぴったりだと思います」


彼はまた、個人的な経験が強く反映されすぎないように意識していると話します。「私はロシア出身で、子どもの頃の思い出を作品に投影するのが好きなんです。不死身のカシチェイ、イリヤー・ムーロメツ、バーバ・ヤーガなどのロシアの古い童話もそうですし、曾祖母の村で森や田舎を探検して過ごした夏には、すごく大きな影響を受けました。子どもの頃のあの感覚をまた味わいたいという思いが常に自分の中にあるんだと思います」


このような目標があると、実際の仕事に繋がることがよくあります。


「陳腐に聞こえるかもしれませんが、異世界の冒険や謎を探す物語に興味を持っていたあの頃があったおかげで今があると思っています。その影響でDestinyの世界に興味を持つようになり、今も信じられない気持ちですが、その開発に貢献できることになったのですから」

友好的で親切なウォーマインド

ラスプーチンの塹壕の外観を制作することになった際、デザインチームからの要望は単純明快でした。ゲームプレイシステムは既に出来上がっており、後はプレイヤーがラスプーチンとコミュニケーションを取るための場所、つまり時間とともに進化する空間が必要だったのです。




ディマにはとても具体的なイメージがありました。「私の参考用ボードには、『ブレードランナー』に出てくるデッカードのアパートの写真が貼ってあります。自分が求めているイメージにぴったりでした。落ち着いた照明に照らされた居心地のいい静かな場所で、プレイヤーが集まってくつろげるような空間です。私はゲームの中で静寂に包まれる瞬間が好きなんです。撃たれることもなく、リラックスして一息つける時間です。ミッションやコンテンツをプレイしていなくても、そこにいたくなるような空間を作りたいと思いました。




彼は同じような雰囲気を持つお気に入りのゲームを思い出しました。「『デウスエクス ヒューマン レボリューション』は、今までで一番好きなゲームのひとつです」と彼は話します。「ミッションの合間にアダムのアパートに戻り、ただ座って音楽を聴いて雰囲気に浸ることができました。Destinyにもそんな空間が欲しかったんです」


とても心地よさそうな空間に聞こえますが、ただ今回はラスプーチンがプレイヤーと一緒にこの部屋にいることを想定しています。ラスプーチンと共にいながら快適な空間というのを実現するのは難解なパズルを完成させるようなものでした。空間を安全で快適なものにするのは簡単です。ですが、巨大なデジタル眼球が部屋の中心から目を光らせている状態で、その空間を快適なものにするというのは、簡単にできることではありません。ディマのチームは、ラスプーチンの威圧感を軽減する絶妙な方法を追求しました。




「普段のラスプーチンは、あの巨大な部屋のずっと奥の方にいます」とディマは言います。「しかし名士のシーズンでは、新たに現れた小さな塹壕で一対一で対面し、ゆっくりと心を開いていく彼のことをより深く知ることができます」


ディマは、プレイヤーとラスプーチンの物理的距離を近づけるのはBungieのシニアアートリーダーであるロブ・アダムスのアイデアだったと言います。「ラスプーチンを地面近くまで下げ、スクリーンに近づいて彼と対面できるようにするというのはロブのアイデアでした。照明の設置方法についても、プレイヤーと彼の距離を考慮して決められています。物理的距離と感情的距離を対比して描いたのも意図的なものでした」『形態は機能に従う』という言葉のとおりですね。



ラスプーチンの懐古

プレイヤーの心に響くだけでなく、部屋のデザインには宇宙の中での存在理由が必要でした。そこで、ペンと紙でデザインを描き始める前に、ディマは疑問を投げかけました。なぜこの塹壕は、プレイヤーが発見する以前から存在していたのか?


「中に入るとすぐに、この場所が何らかの目的のために使われていたことが分かります」とディマは言います。「この部屋には目的と機能がありました。ゲームプレイのためだけに作られた場所ではありません。これらの塹壕はかつて熾天使の研究者たちがラスプーチンと話し、彼の通信を解読する場所だったのではないかと私は考えました」




ストーリーチームとの関係はすぐに密接なものになりました。「私たちは可能な限り協力し合います」とディマは話します。「ストーリーチームのほうから、デザインのアイデアや、特定の要素をグラフィックでどう表現するかといった提案があることもあれば、私がビジュアルを売り込み、それがフィクションの世界に組み入れられる場合もあります」


後者の場合、ディマは自身がDestinyで大切にしている要素をフィクションに直接組み入れてきました。「これらの塹壕は初期のラスプーチンの時代からあるものなので、技術的に古い感じになることは明らかでした。ですが、それこそが私にとってDestinyを構成する大事な一要素なんです。ホログラムは使われていますが、アイアンマンのような真に洗練されたものではなく、全て触覚的なものです。Destinyでは全てのものの背後に歴史があり、誰かが過去に触れたことを感じさせます。歴史を感じさせるにはスクリーンやボタンのような物理的なものを扱うほうがずっと簡単です」




ディマは時代を感じさせることを重視し、自分が興味を持っていたインダストリアルデザインを基にデザインを描きました。「部屋にはラスプーチンが研究者たちと会話をする際に使っていたスピーカーが1台あります」と彼は説明します。「天井の大きなクラスターにはケーブル、センサー、カメラが繋がれており、カメラはラスプーチンが話し相手を見ることができるように部屋の中心を向いています。そして、彼らが話をしている間、コンソールに座っている人たちが、ラスプーチンの言葉を全て解読して保存するという記録作業を行っています。塹壕の中に入ると、ラスプーチンを作った熾天使の研究者たちのかつての様子が浮かんでくるはずです」

ライトの点灯

塹壕には、部屋の雰囲気を盛り上げつつ、ストーリーに深みを与える要素が盛り込まれています。ディマは、いくつかの装飾が追加されたのは、単純に自分がデザインしたかったからだと認めています。「電光アナログマップを作りたかったんです」と彼は言います。「自分のために作ったようなものですね。絶対に塹壕の中に欲しいと思って」やらない理由がありませんよね。誰しも巨大なライトブライトのおもちゃで遊ぶのを夢見たことがあるでしょう?




「あのマップが大きな反響を呼ぶとは思っていませんでしたし、正直特に注目してもらえるとも思っていませんでした。しかし今までの反応を見ていると、多くの人がこのマップに興味を持ち、どんな意味があるのか推測し始めたようです。たくさんのメッセージをいただき、塹壕の中でもそのマップがお気に入りだと言ってもらえたのは、とても嬉しかったです」


スタジオ中の同僚から、インスピレーションを与えるようなアイデアが数多く寄せられました。シニアアーティストのイヴ・キャンベルと環境チームの案は、すぐにディマの塹壕のお気に入り要素のひとつになりました。


「ラスプーチンとプレイヤーが話している時の、クールなスクリーン効果を発案してくれました」と彼は言います。「彼がスクリーン上で動いて、部屋の中を移動するプレイヤーを追跡するというものです。とても快適な隠れ家的空間ですが、沈黙の中彼に常に見られていることで一種の不安感も感じさせます。ジャンプしても、彼の目はその動きに合わせて上下に動くんです。




同僚とのクリエイティブな協力関係によって思ってもいなかったものが出来上がった例は他にも多くあります。「時間をかけて進化させてきたコラボレーションプロセスは、とても有機的な感じがします」とディマは言います。


Bungieに入社してから5年間、ディマは息づく世界の構築に尽力する同僚たちと一緒に仕事をしてきました。彼と話をしていると、情熱を持った人たちが集まって仕事をすると素晴らしいアイデアが必ず生まれるという印象を受けます。巨大な光る眼球が掲げられた、温かみある光に照らされた塹壕もまさにそのひとつと言えるでしょう。

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