[ネタバレ注意: Destiny 2のミッション「予感」に関する詳細が含まれています。まずはプレイして、エキゾチックを獲得し、終わったら戻ってきてください。それまで、ここで待っています。]
ガーディアンは通常、救難信号を受けて助けに向かうことはあっても、救難信号を送ることはありません。
しかし今、あなたはここにいます。宇宙の果てにある遺棄船にゆっくりと近づいています… ガーディアンからの救難信号を受けて。船体に近づけば近づくほど、鉄壁のアーマーに馴染みのない感覚がまとわりつきます。何でしょう? ためらい? もしかしたら、恐怖?
ありえない。
あなたはガーディアン――光の砦であり、神々の征服者であり、完全武装していかなる試練にも立ち向かう覚悟を持つ者です。
しかし、薄暗いタラップに足を踏み入れ、静寂に包まれた瞬間から、この船の邪悪さがこれまでに経験したものとは違うことに気がつきます。確かに、この漂流する墓の奥底にあるものが何の脅威にもならないという可能性もあります。ですが、自分の船から一歩離れるたびに、己の手には負えないのではないかという考えがよぎります。
できるだけ長く、その考えを頭から振り払ってください。
特に、自分がいる部屋の壁が動き出した時には、絶対にその考えを断ち切るべきです。
あなたならできます。
プロローグ
ピラミッド艦が残した痕跡を見れば、人間、エクソ、アウォークン、エリクスニー、カバル、そしてハイヴまで、誰もが生き残るために何だってするはずです。暗黒を求める者の中には、光のように利用できる潜在的な力を見出す者もいれば、暗黒そのものの中に潜む謎の声に屈する者もいるでしょう。
ですが、力には様々な形があります。選士のシーズンでは魅惑的な新しい敵が登場し、バンガードに強大なカバル帝国との同盟を提案しました。しかし、妥協を嫌うカバルの女帝カイアトルは、交渉の場で強く出過ぎたことにより、2つの派閥の対立に火をつけてしまいました。
この対立を中心にシーズンは展開していきますが、Bungieは、カバルとバンガードが不仲だからという理由だけで暗黒の物語が終わったわけではないことを強調する必要があると考えました。
Destinyのように大きくて複雑な世界では、常に複数の物語が語られています。時には、それらの物語は小さく、控えめで、宇宙の端々に隠されています。このような場合、プレイヤーが自ら調査する必要があります。なぜなら、みんながカバルの輸送ポッドに注目している間に、影で何か恐ろしいことが起こっていたとしたら大変だからです。
だからこそ、私たちは影の中へ向かうのです。

「船が異常な状態で戻ってきた」
選士のシーズンのクリエイティブリーダーを務めるロビー・スティーブンスは、このミッションの基礎作りの経緯について次のように語っています。「私たちは早い段階で、カイアトルがバンガードと同盟を結ぼうとする理由としてハイヴと暗黒の存在が挙げられているものの、もはや暗黒の物語が語られていないことに気がつきました」そのことに気づいてすぐに、彼とチームは暗黒の物語の糸を掴んで引っ張り始めました。
機能リーダー兼シニアデザイナーのマット・ハンドは、チーム内で暗黒の到来がもたらした大きな影響について話していたときのことを振り返ります。まだ表面的な部分すらほとんど語れていないことを、彼らは強く意識していました。「私たちにとっては、目の前にバレエのチュチュを着てタップダンスをしている大きな象と、惑星がすべて消えてしまったという事実を示す大きなネオンサインがあるような感じでした。そこで私たちは、このネオンサインについて何ができるか自分たちに問いかけたんです。なぜなら、ここには語られるべき物語があるからです」
その後のブレインストーミングセッションで、ちょっとした奇跡のような出来事がありました。小さなシーズンミッションで暗黒の物語を表現するにはどうしたらいいかというテーマについて自由な発想で議論していた中で、遺棄船を舞台とするアイデアが提案されました。そんなとき、セッション参加者の一人がこう質問したんです。「船が異常な状態で戻ってきたとしたら?」
この一言で決まりました。全員がSFホラーのクエストに口だけで挑み、その言葉だけですべて攻略できたような感じでした。「何の船? どんなふうに異常?」ホラー映画のファン歴何十年にもなるメンバーがそろったチームからは、すべての質問に対してたくさんのインスピレーション溢れる答えが返ってきました。
ハンドは、「予感」のシニアストーリーデザイナーであるニッコー・スティーブンスが、このアイデアに対する興奮を抑え切れずにいた様子を思い返します。「ニッコーはとにかく早く書き始めたくて仕方がない様子でした。あまりにも多くの可能性があり、それがすべて洪水のように押し寄せてきていたんです。ニッコーの脳みそは爆発寸前でした。私は驚きと感心で開いた口が塞がらず、チームの誰もが彼のエネルギーに刺激を受けていました」
結果として生まれたのが、失敗した接触、暗黒の内なる声、そして傷つけられたプライドを守るためにカルスが払った代償についての物語です。グリコン号の最後の旅で何が起こったのかを示す痕跡が、ボロボロになった船の中に残っています。グリコンは漂いながら、誰かが救難信号に応えてくれるのを待っています。この救難信号は、プレイヤーが船長の運命を知るための唯一の手がかりです。
「『船が異常な状態で戻ってきたとしたら?』という一言ですべてが動き出したように思います」ニッコー・スティーブンスはこのように語っています。「この言葉がこのミッションの根底にあり、ガーディアンの皆さんは、カルスが下した恐ろしい決断の結末を目の当たりにすることになります。そして、何が起こったのか、誰に責任があるのか、なぜその行動を取ったのか… その決断に至ったすべての要因がゆっくりと解き明かされていくのです」
ブレインストーミングセッションを始めてから15分も経たないうちに、チームは自分たちの目指す方向性をはっきりと認識し、気づけばスタジオ中からサポートが寄せられていました。
「救難信号を送りました」とハンドは言います。「『不気味な船が必要だ!』と。すると、スタジオ中の人が急遽セッションに参加してくれることになったんです。テストチームも、オーディオチームも、ワールドアートチームも、照明チームも、みんなが期待以上の結果を出してくれました。とにかく素晴らしい経験でした」
良いゲームを作りたいという意欲だけでなく、ホラーに対するチームの情熱がここにも表れています。「毎朝ベッドから起き上がろうと思えるのは、こういう素晴らしい経験ができるからですね」と、ロビー・スティーブンスは述べています。

みんな一緒に
SFホラーにはベーシックでありながら説得力のある魅力があり、チームはその魅力を最大限に引き出しました。まるで人生の大部分をかけて、このときのために備えてきたかのようでした。とてつもない時間をかけて、自分たちの作品にインスピレーションを与えるコンテンツを貪ってきたのです。「予感」に携わった全員が(おそらくBungieの社員全員が)、『エイリアン』や『イベント・ホライズン』などの映画を見ているような印象を受けます。しかも、一度ではなく、何度も。
「ゲームの中に不気味な要素を取り入れるチャンスがあれば喜んで飛びつきます。そういった作業が大好きです」こう語るBungieのシニアアーティスト、イブ・アストラは、最後の部屋を含め、このミッションに出てくるいくつかの薄気味悪いエリアを担当しました。「レーティングで定められているゲーム対象年齢の基準を超えていないか、とても心配でした! 最後の部屋の制作を進める中で、どんどん空間の不快度が高まっていったので、チームにおそらく10通以上は確認のメールを送ったと思います。キャラクターの顔から触手が出てくる様子を描きながら、『これってリリースできるんだろうか? これは対象年齢的に問題ないんだろうか!?』と心配していました」
このようなことがしょっちゅうあり、そのたびに次のようなやりとりが繰り返されました。
- 人物1: 見てよ、この船にこんなのを追加してみたんだ。
- 人物2: 待って、そんなことして大丈夫?
シニアオーディオデザイナーのジェニー・ラボンテは、スコーンの死体が転がっている部屋を初めて見た瞬間に「よし、やってやろう」と思ったと言います。
ラボンテはもともとホラー映画の大ファンでしたが、頭を完全にホラーモードに切り替えるため、もう一人のオーディオデザイナーと一緒に『ディセント』を見ました。そして彼らはどの方向からも音が聞こえるような閉塞感を生み出し、それによって想像力がかきたてられるような空間にすることを目指しました。
「探索中に流れるダイアログが、まるで頭の中で響いて聞こえるように調整しました」とラボンテは説明します。「実際に何かを聞いたのか、それとも何かに翻弄されているのか、プレイヤーが疑問を抱くとてもクールな瞬間です。『頭の中で聞こえる? 他にも聞こえている人はいるのか? 誰かに見られている? 待て、誰の声だ!? 何が起こっているんだ!?』というように、不確実性と混乱が一層深まっていきます」
壮大な宇宙の恐怖が常にゴールにありましたが、最初に出来上がったミッションの試案は正直そこまで恐ろしいものではありませんでした… 少なくともその時点では。
「予感」の制作開始当初、ラボンテとシニアオーディオデザイナーのザック・トーマスは、ミッションをプレイしながらジャンプスケアを使用できそうなエリアを探しました。候補エリアを見つけると、後から分かるように目印代わりに一時的な音声を録音しました。
「予感」の制作開始当初、ラボンテとシニアオーディオデザイナーのザック・トーマスは、ミッションをプレイしながらジャンプスケアを使用できそうなエリアを探しました。候補エリアを見つけると、後から分かるように目印代わりに一時的な音声を録音しました。
「2人ともブーイングを録音したんです。文字どおり『ブー。ブー!』と、微妙に違うバージョンで。そうするとミッションの間中、本当に不気味な瞬間なのに、私たちのどちらかが『ブー』と言うのが聞こえてくるんです。この音声はかなり長い間残っていました。イースターエッグとしていくつか残しておけばよかったと悔やんでいます」
(#ReleaseTheBooCut)
ロビー・スティーブンスは次のように述べています。「興味深いことに、このようなレベルの初期バージョンでは、照明は消えていませんよね? 様々なことを試している段階で、どこに向かっているのか100%の確信を持っているわけでもありません。初めてあの植物を見たときのことを思い出します。植物が部屋全体を飲み込み、カバルを2、3体殺していたんです。カバルは空中に吊るされ、鋭いトゲに貫かれていました。その光景を初めて見たとき、『ああ、これは使える』と思ったのを覚えています」
チームの全員が互いに信頼し合い、これがやがて非凡な体験として結実することを信じていました。しかしこの時点では、想像力がまだ少しばかり足りていませんでした。そしてその想像力こそが、(複雑さゆえに危うくゲームに採用されないことになりそうだった)素晴らしい仕掛けを生み出したのです。
シニアアーティストのトッド・ジュノは、「私のお気に入りのひとつが廃棄物圧縮機です」と語ります。「タイミングなどをすべて正しく調整するには、アーティスト、エフェクトアーティスト、デザイナー、その他多くの人の協力が不可欠でした。もちろんプレイヤーが壁を突き破ってしまうことがあってはいけないので、押しつぶされているような感覚を得てもらうための技術的なトリックがたくさん詰まっています」
廃棄物圧縮機のシーケンスにも携わったアストラは、その構築が非常に複雑なためにカットされるのではないかと心配していました。採用されたことが分かり、アートを洗練するようにというメッセージを受け取ったときには大喜びしました。「追加された音声、揺れる画面、そして閉じる瞬間に起こるすべて… もう、作っていて本当に楽しかったです」
大勢のメンバーが各々の力を結集したからこそ、そしてハンドが言ったように、このテーマがチームの心に響いて全員が期待以上の成果を上げたからこそ、上手く機能するものを作り上げることができました。
努力がすべて無駄になってしまってはチームが悲しむので、そうならなかったという意味でも良い結果が得られたのは良いことです。

これは素晴らしい
ホラーのジャンルでよくあるように、最も強烈なホラー要素はミッションの終盤にあります。実際、最後の2つのエリアは、その前にある暗い廊下を通ってたどり着くことができたプレイヤーにかなりの印象を残すと言っても過言ではありません。
ミッションの最後から2番目の部屋では、チームは最終ボス(ボイラー室に住んでいることから、フレディ・クルーガーの愛称で呼ばれています)から興味深い課題を与えられました。「当初のアイデアは、ボイラー室に入ったらボスに追われるというものでした」とジュノは言います。「プレイヤーをより狭いエリアに追い込むためのトラップもあったのですが、ボスにはハードコードされた特定の要素があるため、レイアウトとの相性が合わなかったんです。私たちが求める感覚を実現するのは無理だと感じました」
そこで、リプリーが2丁の銃をテープで貼り合わせるように、チームは即興で考えました。その結果生まれたのが上下階のエンカウントです。プレイヤーは上の階と、狭くて高圧的な下の階を自由に何度でも行き来することができます。
ロビー・スティーブンスはこう述べています。「これまでにも、異なるエリアをまたいでプレイするレイドはありました。ストライクのボスの中には、ごくわずかにその要素があったとしても、今回ほどのものはありませんでした。プレイヤーは実際にボイラー室に降りる必要があります。そして、ボイラー室が再稼働したら、すぐに脱出しなければなりません」
この空間について試行錯誤を重ねたジュノは、すべてを極端なレベルに設定したと語ります。「天井を可能な限り低くしました。もちろん、ある一定の基準値というものが存在します。その基準値のギリギリまで、天井を低くしたり、ボスを大きくしたりしました。例えば、このパイプの位置をあともう少しでも下げると、経路探索の妨げとなってしまいます」
オーディオチームはこのエンカウントを見て大いに気に入りました。ただ同時に、パイプに関する問題に直面することになりました。「ザック・トーマスが苦労したのは、パイプの音が適切に聞こえるようにすることでした」とラボンテは言います。「なぜなら、あの部屋ではすべてが燃えているからです。ボスが燃えていて、スコーンが燃えていて、炎による攻撃が繰り出されています。『うわ、部屋全体が今にも炎に包まれそうだ』という状態です。条件を満たす音を作り出すのはとても難しいことでした。彼は、あらゆる火の要素が散りばめられた非常に狭い空間で熱を帯びるパイプの音が聞こえるようにするという素晴らしい仕事を成し遂げました」
炎を制し、ボイラー室での用が終わったら、残っている探索エリアは1つだけです。
- 良い知らせ: これが最後の部屋です。
- 悪い知らせ: これはレーティングの対象年齢に関するメールが10通以上届いている部屋です。
ロビー・スティーブンスは、映画『アナイアレイション』の最後の不穏なシーンに触発されたときのことを振り返ります。(『アナイアレイション』に関する漠然としたネタバレがあります。ネタバレを回避するには次の段落まで読み飛ばしてください。)異質なものが誰かの人間性を破壊する様子は恐怖でした。それをDestinyの世界に置き換えてみると、その破壊の対象はガーディアンになります。「クリエイティブリーダーとして、私はこのアイデアに着目し、マットとニッコーに『よし、この日までに作ってくれ』と言ったんです」
もちろん、最後の部屋の構築には多くの苦労が伴いました。すべてを完璧なタイミングで演出し、一層の恐怖感を煽り、船長を紹介し、さらに報酬であるエキゾチックスカウトライフル「デッドマンズテイル」を提示する必要があったのです。
アストラは、アートディレクターのジェイソン・サスマンと『アナイアレイション』について話す中で、この映画からインスピレーションを得たときのことをよく覚えています。「『ガーディアンから植物が伸びていたらどうだろう?』と想像してみたんです。そこからは、アイデアがどんどん湧いてきました」
構成作業に取り組む中で、アストラは、この非常に暗い部屋の中にガーディアンがいること、そしてそのガーディアンが何かを持っていることを、プレイヤーにすぐに気づいてもらえるようにしなくてはならないという課題に直面しました。ですがアストラはインスピレーションに基づいて選択をし、それがグリコンの謎の船長の墓場となりました。
「本当に難しかったです」とアストラは言います。「そこで私は考えました。『彼が部屋の真ん中に吊るされていたらどうだろう? 誰もが絶対に彼の存在に気づく位置に…』彼をそこに配置し、少し動きを加えて、実際につるに巻かれた彼が揺れ始めるのを見た瞬間、『おお、これは本当に怖い』と思いました」
ですがどんなに不気味で怖くても、エキゾチックスカウトライフルを手に入れるためならガーディアンは何だってやってみせるでしょう。

エピローグ
紙の上では、「予感」の世界構築は信じられないほど緻密で、答えよりも多くの疑問を投げかけます。優れたミステリーが生む魔法です。
カルスは今どこに? 彼は暗黒と接触したのか… それともまったく別の何かと接触したのか? これが唯一の試みだったのか? 実体とは何か、その存在は私たちの暗黒に対する理解を変えるのか? あの植物は何なのか? 放浪者は何を知っているのか? この船で起きたことは他の場所でも起こりうるのか? シティでも起こりうるのか?
Destinyのストーリーのまったく異なる側面がシーズンを通して展開される一方で、たった1つのミッションからこんなにも多くの疑問が生まれるのです。
ニッコー・スティーブンスは、このようなミッションが特別なものである理由の核心に触れました。
彼は次のように言っています。「斬獲のシーズンでクロウとスパイダーの間に起こったような小さな物語は、あまり重要ではないと言う人もいるでしょう。確かに壮大なストーリーに直接影響することはないかもしれません。しかし、この世界の登場人物たちがどんな者たちなのかは知っておくべきです。自分が誰のために戦っているのかが分からない状態では、少なくとも私にとっては、これらのミッションを行う理由が揺らいでしまうからです」
だからBungieチームはプレイヤーに向けて、他の多くの救難信号と変わらない、当たり障りのない救難信号を送りました。この救難信号に応えた者は、存在することすら知らなかった宇宙の片隅で、自分が直面したことのない敵に襲われ倒れた、面識すらないガーディアンとの出会いを果たすのです。
最も勇気が必要とされる場所に、思い切って足を踏み入れていただき、ありがとうございます。
